屋根のカバー工法で失敗しないための対策
屋根のリフォームをする際、既存の屋根の上に軽い屋根を被せる工法をカバー方法といいます。手軽にできるイメージがある一方、失敗したという話もあります。どんなことで失敗してしまうのでしょうか。今、屋根のリフォームを検討されている方、これから屋根のリフォーム時期を迎える方は、カバー工法も候補に挙がるかもしれませんので、失敗の例や防衛策を見ておきましょう。
カバー工法を詳しく紹介
経年劣化などで寿命を迎えた屋根。修理や補修だけでは修復できない屋根。この状態になってしまうと、屋根全体を新しくしなければならない工事になり、大型リフォームとなります。工事には2つの方法があり、一つは葺き替え、もう一つはカバー工法(重ね葺き)です。葺き替えが既存の屋根を完全に解体・撤去してから、新しい屋根材で張り替えていく工事に対し、カバー工法は既存の屋根の上から防水シート(ルーフィングシート)を張り、屋根材を設置していく工事になります。決定的な違いは、古い屋根材を解体し、撤去するかどうかにあります。
どちらを業者がすすめるか、業者が2択を提案した場合にどちらを施主様が選択するかは、屋根の状態を見てからです。工事の手間や費用も違ってくるため、よく見極めて選択しなければないでしょう。
カバー工法のメリット・デメリット
カバー工法のメリット・デメリットを知ることは、失敗につながる原因のヒントになります。業者に提案された時も質問できるようになりますから、しっかりと覚えておきたいものです。
メリット
1.既存の屋根の解体や撤去がないため、処分費用がかからない
既存の屋根の上に新しい屋根材が乗るため、廃材が出ません。埃が出ることもなく、処分費用や運搬費用は不要となります。
2.工期が短い
既存の屋根の解体・撤去がないため、その分の工程が省かれ、葺き替えと比べて2~3日は工期が早まります。
3.遮熱性・防音性・防水性が高まる
多少の効果になりますが、既存の屋根と二重になるため、寒さや暑さ、音の入り、防水シートを新しくしたための防水性が高まります。
4.アスベスト対策になる
既存の屋根にアスベストが使用されている場合、現在は禁止されている材料となるため、撤去すれば約20~50万円はかかることになりますが、既存屋根の上にそのまま新しい屋根材を被せる工事では、それらのことを考えずに済みます。
5.リフォーム費用が抑えられる
既存の屋根を再利用することがベースになるため、人件費と総工事費が抑えられることになります。
デメリット
1.屋根が重くなり、耐震性が低下する
新しい屋根材が軽いといっても、被せることになれば、若干の重さは増えることになります。重心の関係で、屋根が重いほど耐震性は低下してしまいます。
2.既存屋根の劣化が激しければ不向き
下地を再利用するため、経年劣化が激しい状態や下地が明らかに傷んでいる状態には、工法自体が不向きとなります。
3.再修理の際、リフォーム費用が高くなる
一度、既存の屋根に新しい屋根材を被せてしまうと、何かの不具合があった時にすべてをはがす必要が出てきます。二重のはがしが必要になるため、手間がかかり、施工も大変になるため、費用がかかってしまいます。
4.下地のチェックができない
もし、下地の不具合を見落とし、既存の屋根に新しい屋根材を被せた場合、下地の不具合がどんどん進んでしまいます。
5.屋根材が限られている
すき間や重さの問題で、既存の屋根が瓦の場合はカバー工法はできません。新しい屋根材を瓦にするカバー工法もできませんが、軽量瓦は別になります。既存の屋根がトタンの場合も、劣化している可能性が高いため、カバー工法はすすめられないはずです。基本的に、軽い屋根を被せることになるため、スレート、金属、アスファルトシングルの屋根材が主になります。
カバー工法で失敗する原因と対策は?
施主様の選択で失敗する場合、業者による失敗の場合があります。業者による原因の場合は、下見点検の際の業者の確認不足や見立て違いによるものです。つまり、屋根の状態に合わせた施工をしなかったことに尽きます。では、2つの場合を見ていきましょう。
施主様の選択で失敗する場合
①訪問業者の営業で契約してしまった
「屋根に壊れている箇所がある」「キャンペーンで割引がある」「火災保険で無料に施工できる」などという言葉に誘導され、どんどん相手のペースで施工が進んでしまい、まったく確認することができなかった。
対策
- すぐ契約しない
- 第三者に相談する
- 相見積もりを取る
②費用だけで決めてしまった
葺き替えと100万円前後の違いが出るカバー工法は、どちらかの選択を迫られると、つい費用面で安く済むカバー工法を選択してしまいがちです。既存の屋根の表面や下地に何も問題がなければ、カバー工法の選択も間違ってはいませんが、特に下地に問題があった場合、後に大問題となります。
対策
- 費用だけで決めない
- 業者の点検報告を見直し、葺き替えと比較して長い目でどちらが得策かを検討する
業者による失敗の場合
①下地の傷みに気づかなかった
新しい防水シートの下には、下地材になる野地板があります。野地板が傷んでいると、いくら新しい防水シートを施工しても雨漏りなどが起こる可能性は高くなります。
対策
- 数社の業者に点検してもらい、相見積もりを取る
- 施工に補償があるのかを確認する
②耐震性を考えず施工してしまった
既存の屋根材より軽い屋根材を被せることになるカバー工法ですが、業者に経験や知識がないと選択を間違え、重い屋根材でも施工してしまうことがあります。耐震性を高める上では、屋根材は軽ければ軽いほうがベターです。
対策
- 施工を決める前に、施主様も新旧屋根材の重さを知っておくこと
- 数社の業者に点検してもらい、相見積もりを取る
③過去のカバー工法をした上にまたカバー工法をした
通常、カバー工法の上に同じカバー工法をすることはあり得ないことです。三重の重さになることや、一度、カバー工法をした場合の次は、葺き替えを提案するが普通だからです。これも、業者に経験や知識がないことや元々カバー工法をしたことがない業者が施工することで起こります。
対策
- 過去にカバー工法をしたことを業者に伝える
- 数社の業者に点検してもらい、相見積もりを取る
カバー工法の費用目安
ざっと費用の目安をいえば、屋根材だけで8,000~10,000万円/㎡、他に金具や板金、野地板、防水シート、足場、諸経費などを合わせれば、トータルで60~250万円ほどはかかるでしょう。
屋根材のグレード、屋根面の数によっても変わるため、第一希望~第三希望までの屋根材でひとまず見積もりを出してもらうようにしてください。
屋根のカバー工法で失敗しないための業者選び
結局、ほとんどが業者の経験や知識にかかっているといっても過言ではないでしょう。リフォーム業者だからといっても、屋根のカバー工法まで対応できるとは限りません。まず、地元で長く経営している業者の中から、次のような業者を2~3社選んで相見積もりを取りましょう。訪問業者は相手にしないほうが懸命です。
- カバー工法の実績が豊富
- 細かい部分まで点検をする
- カバー工法を提案するだけの報告書の根拠がある
- 見積書内容が細かい
- 職人以外の担当者がチェックする管理体制が整っている