地震に強い、耐震性のある屋根はどんな屋根?
数々の地震に見舞われる日本。その度に我が家の建物の耐震性が気になるでしょう。日本の住宅は、7~8割が木造といわれます。多くが木造だからこそ、木造の耐震性を考えなければなりません。
耐震性というと、基礎、土台、柱といった部分だけが注目されますが、屋根の種類によっても耐震性の違いがあるといわれます。それでは、屋根の耐震性を考えてみましょう。
そもそも、耐震性とは?
建築物が地震に耐えられる性質を耐震性といい、耐震性が高いとされる根拠を法律と構造の面から探ってみます。
法律には、耐震性が示される3つの基準があります。
①建築基準法
旧耐震基準に基づいた、1981年6月以前に建てられた建物と新耐震基準に基づいた、それ以降に建てられた建物に分かれている法律です。
旧耐震基準に基づいた建物は、震度5強程度の地震(中規模地震)では建物が倒壊しないとされているもので、震度6~7(大規模地震)程度の想定はされていません。新耐震基準に基づいた建物は、震度5強程度の地震(中規模地震)では建物がひび割れ程度とされ、震度6~7程度(大規模地震)の地震では建物が倒壊しないとされているという、違いがあります。
すべての建物は、耐震基準のどちらかに当てはまるため、新耐震基準に基づいた建物はでなければ、耐震性は弱く、地震で倒壊するリスクが高いといわざるを得ません。
②住宅性能表示制度
2000年に制定された、住宅の品確法制定によるもので、10分野で住宅の性能を等級で表しています。耐震等級は3が最高ランクで、1が新耐震基準を満たすレベル、2が1.25倍、3が1.5倍の強度を示しています。必ず住宅の表示や届け出に必要というわけではありません。
③長期優良住宅法
2008年に制定された、9つの基準を満たした住宅を指します。耐震性については、等級2相当以上の強度が必要とされ、認定されれば、税金やローンなどの優遇があります。
構造で見ると、耐震性の他、あと2つの構造に分かれます。
①耐震構造
地震の揺れと同じように建物が揺れることになります。新耐震基準にあるように、震度5~7程度(中期防~大規模地震)の地震での耐震性のある建物を指し、今では住宅のほぼ9割が耐震構造であるといわれています。
②制震構造
ダンパーと呼ばれる制振装置を建物の構造体に配置し、地震のエネルギーによる建物の揺れを小さく抑える構造です。
③免震構造
建物の基礎と地面の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造です。コスト高になるため、タワーマンションやビルなど、大規模な建物での設置が多くなります。
なぜ、屋根が耐震性に関係がある?
このように見てくると、構造的に最低でも耐震構造に沿った建物にすることは安全面において必須でしょう。新耐震基準に合わせた耐性のある建物であることも重要になります。設計上の問題もしかり、部材の問題もしかりということです。構造上、あらゆる方向を探り、耐震性アップにつなげなければなりません。
今回注目しているのは屋根ですが、屋根は建物の一番上にくる部材になるため、屋根が重い場合は重心が高くなり、バランスが不安定になりやすくなってしまいます。地震がくれば揺れが大きくなるということです。そのため、軽い屋根にすれば、重心が低くなってバランスが安定しやすくなり、建物の耐震性を上げることになります。結局、屋根材を選んで屋根を軽くすることが、耐震性能を上げる要素になるのです。
重い屋根、軽い屋根、屋根材の比較
地震に強いアプローチの一つは、「屋根の軽さ」と「重心の低さ」にあるとわかったところで、重い屋根と軽い屋根になる原因の屋根材について考えてみます。主な屋根材別の重さを挙げると次のようになります。
屋根材 |
重さ |
土葺き瓦屋根 |
60㎏/㎡ |
セメント瓦 |
42㎏/㎡ |
ハイブリット瓦 |
20㎏/㎡ |
スレート |
20㎏/㎡ |
アスファルトシングル |
12㎏/㎡ |
金属 |
5㎏/㎡ |
これを見れば一目瞭然で、旧来の瓦屋根では、金属屋根と比べると14倍、8倍は重さが違うことがわかるでしょう。よって、大地震が起きた時に、旧耐震基準である屋根瓦の建物が次々と倒れていったことも、屋根の重さが原因の一つだったのです。さらに、屋根の重さが柱や壁に亀裂を作ってしまうことで、全壊というダメージも少なくはありませんでした。
それにより、新耐震基準での建物では、より軽い屋根へ移行し、今では金属屋根が主流となってきています。
地震に強い屋根は軽ければ軽いほうがいい!?
重さの結果からすれば、すべて金属屋根にすればいいという結論になってしまいますが、果たして、瓦はまったくダメでしょうか。屋根の重量と耐震性の関係は動かしようのない事実ですが、例えば、ハイブリット瓦のような軽い瓦も出ていますので、設計士が重量を計算して建物の構造を考えているのであれば、一概にダメとは決めつけられないことになります。屋根材だけを見ると、単純に重い、軽いだけの判断になりますが、ハイブリット瓦のような軽い瓦が好みだとお客様が思えば、設計やリフォーム段階で業者に相談してみることをおすすめします。
耐震性のある人気の金属屋根にデメリットは?
圧倒的にシェア率を伸ばし、注目度が高くなっている金属屋根材。中でもガルバリウム鋼板が断トツのシェアを誇っています。軽い、デザイン豊富、耐震性・耐久性・耐風性・防水性があるといった優れた特徴がある割には価格が抑えめで、コスパがよく、リフォームの際にはよく活躍しています。最近では、断熱材一体型のガルバリウム鋼板も出ており、断熱性・遮音性にも優れた屋根材としてますます人気は高まるばかりです。
そのようなメリットだらけに見えるガルバリウム鋼板ですが、あえてデメリットをいうとしたら、リフォームを考えた場合、コスト高になってしまうことがネックかもしれません。
屋根材の種類 |
費用目安 |
スレート |
4,500/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材無) |
5,500/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材有) |
6,500/㎡ |
屋根面積が30坪で75㎡だった場合、スレートでは337,500円、ガルバリウム鋼板(断熱材無)では412,500円、ガルバリウム鋼板(断熱材有)では487,500円と、これだけの開きが出てしまいます。ここに足場代や飛散防止シート代、諸経費などが加算されますから、トータルではかなりの費用になるでしょう。ランニングコストとなるメンテナンス代も高くなる可能性があります。
また、板金加工に優れている職人が手掛けないと、施工が甘くなるリスクが考えられます。基本的にリフォーム業者の施工は、瓦職人、スレート職人が多い傾向にあります。質の高い専門性を持った板金工に依頼することが一番です。
さらに、ガルバリウム鋼板は塩害に弱いことがあります。地域によっては適用ができないこともあるかもしれません。
これらのデメリットも考えた上で、他の屋根材も含めて屋根のリフォームを業者と検討したいものです。
地震に強い屋根にする耐震化への補助
旧耐震基準の建物の屋根を軽くするリフォームを行う場合、イニシャルコスト(初期費用)の助けになるかもしれない補助金制度があります。国の基準、自治体の基準がありますから、お客様も自治体に問い合わせながら勉強をし、相見積もりで最適な地元業者を選択していくことがおすすめです。