屋根のメンテナンス時期や一般的な費用相場について解説
屋根のメンテナンスをいつかそのうちと考えていると、築10年や20年はすぐ過ぎてしまいます。タイミングを逃すと、屋根のメンテナンスの時期がますますわからなくなるでしょう。ある程度の年月が来れば、必ず屋根のメンテナンスは必要になるものです。いったい、屋根のメンテナンス時期はいつなのかを、一般的な費用相場と共に解説していきます。
屋根のメンテナンスをしないとどうなるのか
新築時にいずれメンテナンスは必要だとはわかっても、現実味を帯びて考えることは難しいかもしれません。新しい内外装のうちは、劣化していく状態がなかなか想像できないからです。ただ、現実のメンテナンス時期は必ず訪れます。
特に屋根については重要なメンテナンス箇所となり、放置したままだと屋根を構成している屋根材や防水シート、野地板などの劣化で、次のようなことが起こる可能性が高くなるでしょう。
雨漏り、雨染み、カビ・コケ・藻の発生、すきま風、虫の侵入、屋根材のひび割れ・欠け・落下などです。一見すると大した問題ではないように思えますが、長年放置していると、これらの現象が一度に起きていることもあり得ます。そうなると、屋根の問題が一気に建物全体に影響が及ぶ大問題へと発展しかねないでしょう。最悪の場合、建物が腐食して崩壊したり、解体して建て直しをしなければならなくなったりすることもゼロ%ではないのです。
屋根のメンテナンスの種類と時期・工期
屋根のメンテナンスは、大きく4種類に分けることができます。どんな種類があり、いつメンテナンスをすれば良いのかを見ていきます。
①部分補修・交換
早期に屋根の不具合が発見できれば、部分補修で済む場合もありますが、一部に不具合があるということは、まだ他にも見えない部分に不具合が出ている可能性は大いにあります。
部分補修の例:瓦の漆喰詰め直し、瓦の差し替え、屋根材のひび割れ・欠損補修、谷板金交換、瓦の棟の取り直し、屋根材の棟板金交換、雨樋の破損補修・交換、雨漏り箇所補修
メンテナンス時期:タイミングとして、点検時にたまたま発見される場合や症状が出てわかる場合、症状がなくても目視で分かる場合など様々ですが、症状がなくても築8~10年の間には点検をし、メンテナンス時期を設けることをおすすめします。
工期:1~3日
②塗装
屋根に塗料を塗るのは、美観的なことだけでなく、遮熱性・断熱性・防水性を高めてサビや汚れを付きにくくすること、カビやコケ・藻の発生を抑えることなどの役割があるからです。経年劣化で塗膜と呼ばれる保護機能がなくなるため、初期段階のメンテナンスでは再塗装が必要になります。
メンテナンス時期:最初にどんな種類の塗料を使用しているかで、耐用年数目安になります。主な塗料の耐用年数を見ていきます。
主な既存塗料の種類 |
耐用年数 |
ウレタン |
6~10年 |
シリコン |
8~15年 |
フッ素 |
8~20年 |
ラジカル |
12~15年 |
断熱・遮熱特化 |
15~20年 |
無機 |
15~25年 |
工期:12日前後
耐用年数になっていなくても、汚れや破損などの劣化の症状に気づいた時点で、すぐ業者に点検を依頼することをおすすめします。
③カバー工事(重ね葺き)
既存屋根の上から新しい屋根材を重ねることになります。既存屋根の下地まで、まったく問題のない状態におすすめですが、下地となる防水シートや棟板金、野地板などの劣化に気づかずにいた場合、カバー工事を再度やり直すことはできません。万が一を考え、下地だけは、補修や交換を検討しておいたほうが良いでしょう。
メンテナンス時期:築20年以上になると検討が必要です。時間や費用は節約できますが、カバー工事を判断するには、業者の専門的な目が必要になります。
工期:6日前後
④葺き替え
屋根材はもちろん、下地になる防水シートや野地板など、すべてを一新することになります。屋根のメンテナンスの中で最も時間と費用がかかりますが、新しい屋根に生まれ変わり、安心できるという点では一番でしょう。
メンテナンス時期:カバー工事の検討と同じく、築20年以上になると検討が必要です。
工期:8日前後
※塗装と同じく、カバー工事、葺き替えとも、屋根材の耐用年数にも影響されます。主な屋根材と耐用年数は次の通りです。
主な既存屋根材 |
耐用年数 |
スレート |
20~30年 |
アスファルトシングル |
10~30年 |
ガルバリウム鋼板 |
20~30年 |
瓦 |
50~80年 |
トタン |
10~20年 |
銅板 |
60~70年 |
屋根のメンテナンスの費用相場
大きく4つに分けた屋根のメンテナンスの種類ですが、費用相場をお伝えします。どのメンテンナンスも、部材や種類によって細かく違ってくるため、詳細は業者の相見積もりで比較してみることをおすすめします。
屋根のメンテナンスの種類 |
費用相場 |
部分補修・交換 |
1~200万円 |
塗装 |
40~80万円 |
カバー工事(重ね葺き) |
100~150万円 |
葺き替え |
150~200万円 |
部分補修や交換では、梯子や脚立の使用で済むかもしれませんが、屋根全体をメンテナンスする塗装・カバー工事・葺き替えは、足場を組むことになります。足場代は12~20万円ほどです。他にも、諸費用として工事総額費用の10~15%が必要です。
※2004年以前に作られた屋根材のスレートやセメント瓦の場合、アスベストという有害物質が含まれている可能性があるため、葺き替えの場合、処分費が別途20万円ほどかかります。
屋根のメンテナンス業者選び
屋根のメンテナンスは必須ですが、メンテナンスをしたために、さらに屋根の状態を悪くしてしまうケースも残念ながらあります。屋根のメンテナンスで失敗をしないために、信頼できる業者を選びたいものです。見極めポイントをお伝えします。
①訪問業者ではない
突然押しかけてくる業者は、ほぼ悪徳業者です。「近所のお宅で受注した」「今だけ安くできる」「すぐ工事をしなければキャンペーンが終わってしまう」「屋根が傷んでいる」など、とにかくしつこく粘るでしょう。「他社に頼んである」と追い返してください。
②相見積もりがしっかりしている
必ず3社ほど、相見積もりを取ってください。工事内容に「一式」とある業者は要注意です。内容を記載できないことがあると判断しましょう。割引がある場合も要注意です。なぜそうなるのかの説明を求めましょう。
③屋根のメンテナンスについての有資格者がいる
屋根の点検時には、原因を突き止められなければ、正しいメンテナンスはできないでしょう。メンテナンスに関する技術や経験があることは、適切な工事を適切な費用で行うことの目安となります。
資格としては、「一級・二級かわらぶき技能士」、「一級・二級板金技能士」、「一級・二級建築士」、「瓦屋根工事技師」、「瓦屋根診断技師」などがあります。
④説明がていねいでアフターサービスがある
問い合わせ時から対応が良く、メンテナンスの提案内容を素人にもわかりやすく説明してくれる業者であれば安心です。工事をしたら終わりでなく、その後の面倒まで見てくれる業者を選びましょう。
⑤職人が下請けではない
自社で職人を雇い、屋根のメンテナンスを直に行っている業者なら、現場での指示系統がしっかりし、手抜き工事をされる可能性は低くなるでしょう。大手業者の職人は下請けで費用も高くなるため、自社で屋根のメンテナンスを行っている地元の業者に依頼しましょう。