屋根のあの三角の部分、呼び方は何?
屋根は絵に登場するように、だいたい三角というイメージがあるかもしれません。三角の屋根の種類にも何種類かありますが、屋根といっても部位によって名前があるのです。全体を屋根と呼んでいるものの、本当は何と呼ぶのか知らないことも多いでしょう。そこで、屋根の三角の部分についている名前の他、役割なども解説していきます。
屋根の形について
「うちの屋根は三角ではない」という方もいらっしゃるでしょう。それもそのはず。屋根は三角だけとは限らず、ザっと分けられるだけでも18種類もあるのです。まずは、自分のご自宅がどの形の屋根なのかを知っておくだけでも、リフォーム時には役立ちます。図面があれば、図面を見ながら確かめてみましょう。
屋根の形(名称) |
特徴 |
切り妻(きりづま) |
一般に三角屋根といえばこの形が多い |
寄棟(よせむね) |
最上部の棟から4方向に勾配がつき、真上からは長方形に見える形状 |
方形(ほうぎょう) |
ピラミッド型 |
陸屋根(りくやね、ろくやね) |
勾配がない、平らな形 |
片流れ(かたながれ) |
一面で勾配がついた形 |
招き屋根(まねきやね) |
頂点が片側寄りで、片屋根が短い形 |
入母屋(いりもや) |
神社仏閣に多い、最も格式の高い屋根の形 |
錣屋根(しころやね) |
入母屋と似ているが、切り妻から続く角度が緩い勾配となる形 |
腰屋根(こしやね) |
屋根の上に小さな二階建てが乗ったような形 |
差し掛け(さしかけ) |
頂点をずらして合わせた形状 |
半切妻屋根(はんきりづまやね) |
切り妻の棟の両端が斜めになった形状 |
バタフライ |
切り妻や片流れを反対にした形状 |
鋸屋根(のこぎりやね) |
工場に多い、短い片流れの屋根を連結させた鋸のような形状 |
M型屋根 |
切り妻を連結させたような、M字型の形状 |
マンサード屋根 |
寄棟の勾配を急にした形状 |
ギャンブレル屋根 |
ログハウスに見られるような、切り妻の勾配を急にした形状 |
かまぼこ屋根 |
体育館に見られるような、かまぼこ型の形状 |
複合タイプの屋根 |
玄関、一階、二階などの屋根がそれぞれ違う形状 |
屋根の名称を知るメリット
屋根の構造を知ろうとすれば、細かくてわかりづらい用語がたくさん出てきます。そこまで知らなくても、屋根の表面上の名前や役割を知っているだけでも、メンテナンス時に業者の話がわかるようになったり、見積もり項目を見ても、名称がわかるようになったりするものです。
ざっと知っているだけでも、業者と打合せをする時に何のことをいっているのかがわかるのとわからないのでは、全然違います。お客様が多少でも知識を持っていることがわかると、業者の屋根工事の手抜き防止という、抑止力になるのではないでしょうか。業者を見抜く力にもなるでしょう。
しかも、屋根の名称がだんだんわかってくると、屋根材のことや塗料のことなど、もっと知りたいと思うかもしれません。業者の話がもっとわかり、工事内容もわかってくれば、お任せ状態だった姿勢が自主的になることになるでしょう。最初からされもこれもと知識を詰め込もうとせず、簡単な名称から覚えるだけでも、いい工事につながるきっかけの一つになるはずです。
屋根工事は頻繁にするものではないからこそ、しっかりと目で確かめ、後悔しないようにしていきたいものです。
三角屋根の代表格、切り妻屋根を知る
屋根の形状として一番多いとされる三角屋根の代表、切り妻屋根のことを覚えておけば、違う屋根の形だとしても、基本的なことは理解できるようになります。では、三角屋根の代表格である「切り妻」で説明をしていきます。
あの三角の屋根で一番上の部分は「棟」といい、屋根材を張り合わせた面をさらに張り合わせる、水平になっている頂上の部分です。屋根材を貫板(ぬきいた)という板で抑えてから、金属の「板金板」を釘で固定してあります。これにより、雨水の侵入を防いでいます。
棟に対し、直角に分かれているへの字に見える部分は「妻側」といい、横から見ると三角になっている、雨樋のない部分です。三角部分に取りつけられている板は「破風(はふ)」といい、横や下からの雨風の侵入を防ぎます。
雨樋のつく方の先端部分の横板は「鼻隠し」といい、棟から続く垂木(たるき)という部材を隠す役割や破風と同じく、横や下からの雨風の侵入を防ぎます。
妻側の橋部分は「ケラバ」といい、「妻側」と同じことです。役割は破風と同じで、横や下からの雨風の侵入を防ぎます。
屋根の先端、壁よりせり出した部分は「軒先」といい、外壁を日光や雨から守る役割をします。
屋根を見上げて突き出した部分の裏側は「軒天(のきてん)」といい、屋根の構造部を隠す役割や雨水や日光を防ぐ役割、火災の延焼を防ぐ役割をします。
屋根工事の種類
主な小さな屋根工事として挙げられるのは、漆喰補修、棟板金交換、雨樋交換、屋根材補修・交換です。主な大きな屋根工事として挙げられるのは、屋根塗装、屋根葺き替え工事、屋根カバー工法になります。
屋根工事を行うには、メンテナンス時期が来て点検をし、診断が出てからになることが多くなります。まず、だいたい築8~15年の間に塗装はしなければならない状態に劣化しているからです。
点検をしているうちに、もしかすると塗装では済まなくて、あちらもこちらもと補修する箇所が出てきたり、全面リフォームとして屋根葺き替え工事、屋根カバー工法の提案が業者から出てきたりするかもしれません。実際に屋根の状態を見なければ、どの種類の工事が必要なのかはわからないのです。その時も、屋根の名称を知っているのと知らないのでは、大きな差が生まれるでしょう。
馴染みのある三角の屋根は合理的だった!?
三角の屋根としてよく挙げられる「切り妻」は、構造がシンプルなため、屋根工事がしやすく、新築時やリフォーム時の費用もかからないという大きなメリットがあります。雪の多い地域でも対応できる形状であり、建物のデザインも和風・洋風のどちらにも対応できることから、これだけ日本には多くの「切り妻」の屋根が存在するのでしょう。人気のロフトや小屋裏が作れるスペースがあることや太陽光パネルを設置しやすいことも、要因となっているのではないでしょうか。
デメリットもありますが、シンプルな作りゆえに個性が出しにくいとか、一方の面だけ劣化しやすいとかぐらいで、他の形状屋根と比べても、気にするほどのことではないと判断できそうです。劣化はどの形状の屋根にもつきものですから、定期的なメンテナンスを怠らなければ、メリットによって恩恵を受けるほうがはるかに大きいといえるでしょう。
1回建物を建ててしまうと、屋根だけ形状を変えることはあまりしませんが、もし、これから新築を考えているなら、「切り妻」を検討すると、イニシャルコスト・ランニングコスト共に下げることができ、長い目で見て合理的かもしれません。
参考として、屋根工事で形状を変える場合の費用は200~600万円ほど。「切り妻」へ変更する場合の費用は400~500万円、「寄棟」へ変更する場合の費用は500~600万円、「片流れ」へ変更する場合の費用は300~500万円、「陸屋根」へ変更する場合の費用は300~450万円ほどが目安となります。
勾配を変える場合の費用も200~600万円ほどかかるでしょう。いずれにしても、形状や勾配を変えるリフォームにはかなり費用がかかるため、変更は慎重にすることをおすすめします。